発掘のはなし。

すみません〜、本館の方に集中していたので、ブログを放置しておりました。
あっちの方が一段落しましたので、ぼちぼちと通常業務に戻りたいと思います。


と言うことで、最近読んだ本が「古代エジプトを発掘する (岩波新書)」高宮いづみ 著 新潮新書 です。

1999年3月に書かれたこの本は、早稲田大学文学部で考古学を選考なさっていた著者さんによる、早稲田大学の実際にエジプトのフィールドで発掘なさった記録を記した本です。
現在は近畿大学で教鞭をとっておられる模様。詳しくはこちら近畿大学のページです。


学術的に難しい事は書かれていなくて、とても読みやすいエピソードがたっぷり。エジプト遺跡の発掘現場の実際を垣間見る事が出来ます。

実際に遺跡を掘るまでの前準備、日本にいる間からエジプト考古庁との交渉で調査許可を得るまでが大変だったり、エジプトに行くまでの資料収集と準備が実際掘る事より重要だったり。発掘調査ってテレビで見る「〜発見!」という華々しいシーンが全てじゃないと教えてくれます。

でも印象に残ったのは、フランス調査隊の宿舎に雇われた現地のエジプト少年達が美形ぞろいだったというエピソードだったり(爆)日本の調査隊が現地で掘り始める際には日蓮宗のお坊さんに「お祓い」をしてもらうというエピソードだったりします。


で、この本に載っている発掘現場はメンフィス地区のサッカラの近く。アブ・シールという砂漠の中です。
ここで出てきたのはカエムワセト王子の葬祭殿らしき遺跡です。
カエムワセト王子と言うのはラムセス2世陛下の息子で、「世界最初のエジプト考古学者」とされる有名な方。
ラムセス2世陛下の治世当時、砂に埋まっていたスフィンクスを掘り出したという有名なエピソードをお持ちの方です。

で、このカエムワセトという方、噂に違わず大層な好古趣味をお持ちだったらしく、手ずから建てられたこのアブシールの葬祭殿も新王国時代であったにもかかわらず、古王国時代の様式を多用していたらしい。なので、この調査隊も時代判定に大いに戸惑ったそうな。

ちなみに古王国時代と新王国時代では1300年程度の開きがあります。


当時のエジプト人がこの葬祭殿を見て思った事は、きっとこんな感じ。

◇左螺子式◇さまの記事

昔も今も好古趣味ってのは、突き抜けちゃうと後世の人びとを悩ませるものなのですな。


この本と合わせて読むと楽しい柏木様の博士論文はこちら