アナトリア発掘記
面白かったー!
時間を見つけてはちまちま読んでいたんですが、最後の方は一気読みでした。
アナトリア発掘記 ~カマン・カレホユック遺跡の二十年 (NHKブックス)
- 作者: 大村幸弘
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2004/05/30
- メディア: 単行本
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どうも最近はこういう「発掘記」みたいなのが好きみたいです。
この本、以前借りた時は図書館返却の期日に間に合わなくて読まないまま返しちゃったんですよ。
それが最近のニュース(世界最古の鉄器、トルコで発見 ヒッタイト起源説覆すっていうアレです)を見まして、改めて読んでみようと思うたのですが…
予想以上に面白かったです。
著者の大村幸弘先生らぶ(オイ
いや本気で、こういう職人気質(?)の学者さんって大好きです。
↑のニュースでも扱われたカマン・カレホユック遺跡って、この大村先生が1986年に発掘隊の隊長として発掘し出して以来、ずっと掘り続けている遺跡だそうです。
中部アナトリアの田舎の人々は、とても警戒心が強いらしく、始められた当初は大村先生もかなり苦労なさったそうで、なんでも「盗掘に来た」とまで思われていたそうな。
それを、極めて日本人らしい「糞真面目」な発掘方法で(全ての遺物を洗浄して、ビニールに入れて、発掘箇所が分かるように印をつけて、発掘場所ごとに収納して……)近辺の村民やトルコ政府にも高い評価を得ておられます。
実際、ここ二十数年の間にトルコ政府から遺跡発掘の許可を得て活動している外国の発掘隊は、日本隊だけだそうです。
トルコ=親日国で有名ではございますが……
トルコの皆さん。こんなに信用してくださって、ありがとお―――!
で、何をそんなに大村先生らぶかと申しますと。
この方の発言には「予断」というものが無いからなんです。
遺跡の発掘、保存方法もとても慎重ですし、遺品を並べて「こうだったのではないか」と仮説を立てるにしても、決して「こうだったに違いない!」と声高に叫んだりしない。
「今はこうしたものをこうした年代層で発見したから、こういう事が考えられるけど、また新たな発見があったらこの予測は覆される可能性がありますよ」という姿勢に惚れました。
第一、カマン・カレホユックというたった一つの遺跡に二十年も向き合い、「これから同じ年数が経っても掘り続けているだろう」と仰られる。
一つの遺跡の文化編年を構築するのに「私の一生をかけても追いつかない」と仰っているところが、なんとも地道で職人気質と申しましょうか。
考古学者とはこうあるべきだ、というお手本のようなお方です。
……どっか南の国の遺跡をあれこれ手をつけて、TV出ずっぱりの某教授とは、月とスッ(ry
んで。
この本を読んで個人的にツボったのが、
話がそれるようであるが、ここでヒッタイト人の精神性について少々触れておきたい。
いま、「実用一点張り」という表現を用いたが、ヒッタイトの文章、遺物、遺構などにあたっていくと、万事において非常に現実的な民族であったという印象を受ける。よく言えば誇張のない率直な民族といえるが、悪く言えば潤いがなく合理的かつ冷徹な思考をする民族であったともいえよう。
同書P.138より抜粋
……あれ?どっかのドリーマーな某王子は、民族性からかなり逸脱しておられまするなぁ。