うたげのはなし。
エジプトの富裕階級の者の催す宴会では、食事が終わり酒宴に入ろうとする時、一人の男が木で人間の死骸にかたどったものを棺に入れて持ち廻る。この木製の死骸は、描き方といい彫り方といい、実物そっくりに作ってあり、背丈は一ペキュス乃至二ペキュスある。これを会食者の一人一人に示して、こういうのである。
「これを見ながらせいぜい楽しく酒をお過ごしください。あなたも亡くなられたら、このような姿になられるのですからな。」
エジプト人は宴席でこのようなことをするのである。
「歴史」巻二(エウテルペの巻)七八
棺桶見ながら酒飲むですか。
いずれ死ぬからな〜、と思いながら酒飲んでたわけですね。
道理で
「ワインを十八杯持ってきてちょうだい。酔っぱらうまで飲みたいの。私の喉は乾いて藁のようよ」
パヘリの墓の壁画「イシスの娘」 p135より
な飲み方をする訳ですな。
なんだか古代エジプト人の諸行無常を感じた一文であります。
ちなみに岩波文庫の巻末に付いている「ギリシアの度量衡」に依ると一ペキュスは44.4cmだそうで。この木製死骸は44.4cmから88.8センチになります。うーん、原寸の1/2の大きさになる勘定です。
今で言うと、骸骨の模型見ながら酒飲んでる気分?