心臓が一番大事。

古代エジプト人にとっては心臓が一番大事な器官でした。

なんと言っても心臓は魂と理性と感情の宿る場所であり、体中の全ての穴に繋がっている場所でした。呼吸は鼻から吸った空気が心臓に運ばれるし、食べ物も口から心臓に運ばれて栄養になりました。

涙も唾液も尿も便も、皆心臓に繋がっている管から運ばれて体外に排出されたものだと信じられていたのです。
彼らにとって、目も耳も鼻も口も子宮も精管も肛門もみーんな心臓に繋がっていました。
だから病気になるのも、身体に悪いものを食べてしまって、心臓に繋がっている管が詰まるために病気になるのだと信じられたのです。


古代エジプト人の心臓も忙しくて大変だ。
死んだあとでも取り出された心臓が秤にかけられて、その重さによって楽園に行けるかどうか決まったのですから、彼らにとって心臓は特別大事な器官ですよね。それこそ心臓移植なぞ考えられなかったでしょう。大事に冥府まで持っていかなきゃならなかったのですから。


そしてこの心臓、ヒエログリフで最も重要な文字の一つになっています。

心臓とそれを取り巻く器官を描いて nfr=nefer(ネフェル)と読みます。

(美しい、正しい)と言う意味の聖刻文字で、これ一字をとっても古代エジプト人にとって心臓がどれだけ重要で貴重で美しい器官だったのかが分かります。


因みに私たちがものを考える器官だと知っている脳は、古代エジプト人にとっては只の鼻水製造場所だったようです。

……そーだよなぁ、ミイラにするために内臓取り出した時、心臓は干からびて形が残るけど、脳ミソは溶けてなくなっちゃうもんね。



参考文献
古代エジプト生活誌」エヴジェン・ストロウハル著
「クリスチャン・ジャックのヒエログリフ入門」クリスチャン・ジャック著